データサイエンスとは

DORIBUNデータサイエンティスト

データサイエンスとは

本記事ではワードだけでは捉えにくい「データサイエンス」の基本概念と活用事例を紹介することでデータ活用の本質を理解する。さらにより深く理解するための参考となる本を紹介する。

背景とビジネス環境

近年のIT関連技術や高速通信網の発展、スマートデバイスの急速な普及、SNSやオンラインでのコミュニケーション機会の増加などにより、日々膨大なデータが生成されるようになった。企業活動においても営業や経理、生産や物流など幅広い領域でデータの生成や加工・分析・可視化等が行われ、データを業務改善や利益向上のために活用されることが期待されている。

最近では「データサイエンス」という言葉を頻繁に耳にするようになった。関連するワードとして「データサイエンティスト」という職種も登場し、求人数も急速に増加している。データ活用のニーズが各方面で高まっているため、社内に環境を構築できる専門知識を持った人材が市場で不足している状況である。

データを活用してビジネスの成長を目指す動きは年々加速しており、競合他社よりもいち早く環境整備や人材の確保、社員教育を施すことにより自社の競争力を強化もしくは維持できるようになる。

データサイエンスの定義

「データサイエンス」についてその概念や定義を明確に説明できる人は少ない。特にビジネスの現場において例えばエクセル等で数値計算やデータの要約をすることなど、日々の活動の中で行っているデータ活用と何が違うのか説明することは難しい。そこでまずはデータサイエンスの定義を確認してみたい。

ビジネスにおけるデータサイエンスとは、日々生み出される膨大なデジタルデータを収集・分析することによって価値のある形に変え、様々な場面において特に意思決定をサポートする手段として利用されるものである。例えば今までは感覚や個人の経験に頼って下してきた様々な判断を、データサイエンスの技術やツールを用いて実際のデータの要約や将来予測など、定量的な指標を基に信頼性の高い、判断に有益な情報を導くことができる。

データサイエンスの活用事例

次にデータサイエンスを実際のビジネスにおいて活用している事例を2つ紹介する。

活用事例1:[小売業]ダイナミックプライシング導入による販売価格の最適化

利益向上を目指す小売店舗にとって価格の最適化は最大の課題の一つであるが、これまでの価格の設定は担当者の感覚や経験に依存したり、明確な根拠を持たずに行っているケースが少なくない。

また近年注目を集めているのが需要に応じて価格を変動させるダイナミックプライシングである。既に飛行機のチケットやホテルの宿泊料金等で採用されており、年末年始や大型連休の際の価格は平時に比べて大幅に高く設定されている。小売業界においては、例えば食品スーパーで行われる生鮮食品や総菜の夕方の値下げも大きく捉えればダイナミックプライシングの一つと言える。

このように担当者個人の経験や根拠の薄い基準に基づいた価格設定を避け、過去の取引実績や様々なデータを利用して時間や時期による需要の変動に合わせた適正価格をAIによって設定し、利益率の向上を達成している事例が既に存在する。

活用事例2:[インフラ]地下鉄線路のメンテナンス効率化

総延長が約200kmの東京の地下鉄のメンテナンスは以前はすべて人間の目視による異常チェックが行われ、紙への記入と表計算ソフトへの入力がマニュアルで行われていた。そこで収集できるデータやその利活用法を明確化し、新たにAIシステムを設計・開発した。

その結果、担当者は紙を使わずに小型デバイスから直接データを入力することが可能になり、データはクラウド上に保存される。そしてデータを用いてシステムが予め設定したメンテナンスに関わる指標を算出・可視化し、関係部門と共有することで全体のメンテナンス効率を改善することに成功した。

データサイエンスの本・書籍

ここまでデータサイエンスの基本的な定義や活用法について紹介してきた。最後にさらに深く理解するために参考となる本を紹介する。

データサイエンスに関する本は数式が並ぶデータサイエンティストなど専門家向けのものから一般向けの容易な内容のものまで無数に存在するが、ここではデータ分析環境を自社に構築するために必要な知識を獲得するという観点で以下の本をお勧めする。

データ・ドリブン・マーケティング―最低限知っておくべき15の指標

データをビジネスの成長に結びつけるには正しい指標の設定が必要となる。過去数十年に亘ってデータ利活用の重要性が説かれてきたにも関わらず、日本ではデータ主導の意思決定が成功した事例が少ない。本書ではどのような指標が経営改善に有効なのかを具体的な事例を示しながら解説している。著者はマイクロソフトなど世界のマーケティングを主導する米国企業の幹部向けにコンサルティングを担ってきた実績を持つ。

いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本 人気講師が教える仕事に AI を導入する方法

AIの中でもビジネスに広く応用が利くものの一つが「機械学習」を用いたサービスやツールである。しかしどのように自社のビジネスに利用できるかを具体的に想像するのは難しい。本書は機械学習で何ができるかについてや導入に当たって必要となる検討項目、また導入後の運用について実践的な方法を交えて解説している。