佐川急便「AI活用による不在配送問題の解消」

DORIBUNデータサイエンティスト

リリース概要

佐川急便株式会社は、株式会社JDSC、東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室、横須賀市、グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合と5者共同で、「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に取り組んできた。これは、各家庭に設置されたスマートメーターから取得される電力データを元に、AIが荷受人の将来の在/不在を予測し、最適な配送ルートを案内するシステムを用いるもので、不在配送の削減が期待できる。既に2018年には、東京大学内で行われた配送試験で不在配送を9割減少させることができていたが、2020年10月~12月に横須賀市にて、世界初となるフィールド実証実験を行い、約20%の不在配送の減少を確認することができた。

使用しているデータと技術

このシステムで用いるスマートメーターとは、通信機能を有し、電力使用量をデジタルで計測する電力メーターのことで、2024年度の100%普及を目指して、切り替えが進められている。検針員による定期的な目視検針と異なり、電力の使用量は30分おきに計測されるため、時間帯毎の電力使用量を知ることが可能である。このスマートメーターのデータと配送時の在/不在の結果、さらには世帯情報などを組み合わせて、AIに学習させることにより、AIが将来の荷受人の在/不在を予測・判定できるようになる。単純に、電力値が高いから在宅、電力値が低いから不在といったレベルではなく、「共働きで子ども2人の世帯で、夕方の時間帯でこういった電力使用状況の場合には、不在の可能性が高い」といった、精度の高い予測・判定が可能となる。この判定結果に基づき、不在宅への配送時間をずらした最適な配送ルートを案内することで、不在配送の削減を実現している。これは、配送の効率化によるドライバーの労働環境改善、再配送手続きが不要になることによる顧客満足度の向上はもちろんのこと、AIが配送ルートを提示してくれるので、新人育成のための教育時間の短縮、繁忙期の現場応援人材の即戦力化といった効果も期待されている。現時点での課題として、不在宅を避けながらのルート設定となるために、総走行距離と稼働時間は増加傾向となっているが、こちらも従来と同等レベルに抑えた形での不在配送の削減を目指していくとしている。今後、さらに電力データと配送時の在/不在の結果のデータを蓄積し、AIに追加で学習させていくことで、予測精度はさらに向上し、短時間・短走行距離となる配送ルート探索のアルゴリズムを組み合わせていくことで、社会全体に大きなメリットをもたらしていくものと考えられる。

物流業界の他社事例

これ以外にも、佐川急便株式会社では、同社のグループ会社であるSGシステム株式会社、フューチャーアーキテクト株式会社と共に、配送伝票入力業務を自動化するシステムを導入している。従来は、人がシステムに手入力していた配送伝票の情報を、ディープラーニングによる文字認識技術を活用し、情報の読み取りから既存システムへのデータ連携までを自動化することにより、1ヶ月あたりで約8,400時間の時間短縮を可能とした。
また、ヤマト運輸株式会社は、アルフレッサ株式会社と共同で、各顧客の日々の配送業務量を予測するシステムとその結果を元に適正な配車計画を行うシステムを開発し、導入を開始した。アルフレッサ株式会社が持つ、販売・物流・商品・需要トレンドなどのビックデータから、AIが注文数、配送発生確率、納品時の滞在時間などの顧客毎の配送業務量を予測する。そこに、ヤマト運輸がこれまでに蓄積した物流や配車に関するノウハウ、さらに渋滞などの道路情報を加えて、効率的かつ安定的な配車計画の作成ができる。
一方で、日立物流株式会社は、ドライバーのリスク予測にAIを活用している。運行中のドライバーの脈拍や血圧をリアルタイムで取得し、その生体情報と走行時の車両の挙動から、ドライバーの事故リスクをAIが予測する。事故のリスクが高い場合には、ドライブレコーダーの動画と合わせて管理者に通知するシステムとなっている。